一排会コラム


第1話 バレーは何故面白いのか?

第1話にふさわしい題材を考え、めずらしくこのような話からスタートします。
数あるスポーツの中で、自分にとってバレーボールの魅力というのは一体なんだろうというのが今回のテーマです。

まず最初に挙げられるのは、いろいろな局面で個々の果たすべき役割がめまぐるしく変化するということです。
これはチームスポーツ共通の面白みでもありますが、特にバレーはその変化の幅とスピードが突出していることに気づきます。
ある瞬間はアタッカーでありながら、その5秒後にはレシーバーとなり、さらにその5秒後にはブロックカバーとなり・・・といった具合にです。
さらに興味深いのは、この役割の変化は、必ずしも相手の出方を見てから事後対応的に発生するのではなく、事前に、また無意識に個人個人が次に起こりうることを想定している結果だと考えられることです。
サッカーや野球のような広いフィールドでの動きでは無いので、事後対応では全く遅すぎるのです。具体的にいえば、相手から、どのようなボールが、どこに返ってくる可能性があるのか、そして自分はそのボールをどのように処理することが最適なのかを、少しでも早く判断し、事前に体勢を整えておかなければいけないというスポーツなのです。

野球でも、優れた野手は相手バッターや自軍ピッチャーの状況、キャッチャーのサインや得点差などのゲーム状況によって守備位置を変えますが、バレーではその能力が不可欠です。しかも、ワンプレイの中で状況はめまぐるしく変わるのですから、求められる状況判断力と役割認識力は非常に高いものになります。
一般に「センスがいい」と言われるプレイヤーは、こうした能力に長けています。この能力は論理的な判断力・認識力とは少し違います。おそらく、もっと右脳的でスピーディな判断なのです。理屈ではなく、画像として状況を把握し、半分無意識に判断する能力と言ってもいいと思います。
これは、バレーボールが他に比べ精神状態に左右される(つまり流れ次第で弱者が強者に勝つことが起こりやすい)スポーツであることの理由のひとつでもあります。一排会風にいえば「気合い」です。この「気合い」というのは言葉を代えると「プレイに対する集中力」です。この集中力が高まっている時には次に起こりうる場面の想定がスムーズに行えます。したがって、その状況における自分の役割にスムーズに移行できるのです。ボールを見てから判断するチームと、事前の想定を行うチームでは後者が有利であるのは当然です。ある時は大きなフィジカル面での格差をひっくり返すほどの影響を及ぼします。
これは「勘」の集積とはちょっと違います。あくまで情報を基にした「判断」です。この判断力を磨くためには、まずバレーが「ベクトルのスポーツ」であることを感覚として持っておかなくてはなりません。

バレーボールではワンプレイで3回(ブロックを入れれば4回)までのタッチがあります。そのため「点」のスポーツと捉えがちです。しかし実際には、サーブを打ってからアタックが決まるまで、ボールは実は一筆書きのように1本の線で繋がっています。これが次のプレイへの因果関係を高め、次に起こりうる場面の想定を可能にしているわけです。また、インプレイ時にはボールが停止することがなく、常に力学に基づいた動きを継続します。ここが野球やサッカー、バスケと最も違う点でもあり、バレーは「ベクトルのスポーツ」であるといわれる理由です。そしてコートやネット、アンテナは座標上の制約条件とみることができます。
プレイ中、ボールが相手コートにある時、自軍は全員が「どのように自軍コートにボールが返されるか」ということを考え、備えます。フォワードであればブロッカーとして、バックであればレシーバーとしての次のプレイにおける自分の役割を想定するわけです。
相手のプレイとボールの行方(ベクトル)を凝視し、コートとの位置関係(座標上の条件)を確認しながら、自分のポジションと体勢を最適レベルに近づける作業がここで行われます。この作業を行う時には、経験に基づく確率論と、ベクトルに基づく消去法が同時に働いています。プレイヤーはそれをほとんど瞬間的に行っているのです。

例えば自軍のサーブが相手のライト側に飛んだとします。すると、セッターの力量にもよりますが、センターからの速攻の確率はやや下がります。次にそのサーブカットがライト側に流れたとします。これでセンターからの速攻の確率は極めて低くなり、ライト攻撃の確率が一気に高くなります。
もしレフトにエースがいれば、苦しまぎれのレフトオープンの可能性もあります。しかしここで相手セッターのスタートが遅れ、走りながらでなければそのレシーブに追いつけないということに気づいたとします。この段階で、相手からのボールの返り方は、ライトからの攻撃か、またはチャンスボールとして戻ってくるかの2つに1つとなります。この時、体勢やポジションはライト攻撃に備えています。もしチャンスボールだった場合でも時間的に対応が可能だからです。
そしてやはりトスはライトに上がったとします。もし自軍のブロッカーが2枚追いついていれば、トスの軌道とブロックの位置関係でアタックの飛んでくるコースはかなり限定的に想定できます(ブロックの上から叩きつけられない限り)。もしライトバックのレシーバーであれば、味方のセンターブロッカーの右手越しにボールが見える位置よりも、より外側(右側)にポジションをとる必要があります。どのくらい外側に寄ればいいのかは、個人のレシーブ能力や得意な方向(左右)によって変わりますが、少なくとも右手の内側に位置することはありません。守る深さ(サイドラインからの距離)は、相手アタッカーの打点、トスとネットの距離、想定したアタックコースをたどった場合のサイドラインに対する角度によって決まります。同時に、体勢については、右側(サイドラインの外側)にはじかれるよりは左側(コートのエンドライン側)にはじかれた方がチームとしてリカバリーできるので、両肩を結んだラインは想定した打球線に対する垂直線とサイドラインに対する水平線の範囲で構えることになります。

言葉にするとこれだけのことを(いや、もっと多くのことを)プレイ中には瞬間的に行っているのです。おそらく情報を画像として捉えているから、それが可能なのです。もし論理で考えていたら、当然プレイの速度に追い付けないからです。
プレイ中にコート内で1人が対応できる範囲は、せいぜい広くて4m前後、強打の場合だと2m四方がいいところです。つまり、事前のポジショニングが本当に大切なスポーツだということです。逆に言えばフィジカル面での不利を、適切なポジショニングでカバーできるということでもあります。

アタックやブロックを決めた時の爽快感など、バレーならではの面白さ、楽しさはもちろんあるとは思いますが、私のようにフィジカル的に劣っているプレイヤーにとっては、このポジショニングの面白さというのは格別です。今後年齢を重ねていき、元々無い体力がますます減っていった時でも、きっとこの面白さは残せるはずだと思っています。そしてこの面白さが感じられるうちは、是非試合に出続けたいと思うわけです。(佐羽 高29)


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